【インタビュー】探究とは、人生そのもの。挫折を経て見つけた、若者の力を引き出す仕事。
教壇には立たないけれど、教育の現場を支えている人たちがいます。
仕事への想い、飛び込んだきっかけ、大切にしていること。このシリーズでは、そんな一人ひとりの言葉を、記事にしてお届けします。
「総合的な探究の時間」を知っていますか?
2022年度から全国の高校で正式に導入された、比較的新しい科目です。自ら課題を見つけ、解決する力を養うことを目的としています。
しかし、導入から数年が経つ今も、現場では試行錯誤が続いているのが現状です。
そこに外部の専門家として関わっているのが、高等学校向けの探究支援をはじめ、企業の採用広報や面接代行など、幅広い事業で活躍されているMAE.代表の森あやねさんです。
今回は、若者の力を引き出す「探究支援」の仕事を続けている森さんに、お話を聞いてきました。
新卒時代の挫折が原点。非認知能力を育み、自分らしい人生を歩んでほしい。

── MAE.について教えてください。
現在は、高校向けの探究支援や講演、民間企業の採用広報や面接代行といった仕事をしています。2026年2月に1周年を迎えました。
高校での授業と就職の支援は一見異なるものに思えるかもしれませんが、私の中ではすべてつながっています。それは「若者の非認知能力を育てる」という視点です。
非認知能力というのは、自己肯定感や自分軸、立ち直る力など、テストの点数のように数値化できない力のことです。
対象が高校生でも大学生でも、非認知能力を育み、自身が納得した人生を歩めるようにサポートすること。そして、探究の授業を手探りで進めている先生方の助けになることが、私の役割だと思っています。
── 「非認知能力」に注目したきっかけは何ですか?
私自身、新卒1年目で仕事を辞めてしまったことで、自己嫌悪に陥りました。人生初の挫折ということもあり、その自己嫌悪は今も強く残っています。そしてこの思いが、事業を始めたきっかけになっています。
1年目で壁にぶつかったのは、非認知能力や社会人としての基礎力が身についていなかったからだと感じています。
過去を振り返っても、誰かが決めた正解を疑わずに学校生活を過ごしてきました。そして、その20年余りで得たものは、社会に出てからはあまり役に立ちませんでした。
だからこそ、まだ頭の柔らかい高校生や若い世代の人たちには、今のうちに非認知能力や社会人としての基礎力身につけて欲しいという想いがあります。実際に痛い経験をしたからこそ伝えられることがあるので、それがこの仕事を続ける原動力になっています。
現場に寄り添い、生徒の力を引き出す。それが私の探究支援。

── 探究支援について具体的に教えてください。
愛媛県立北宇和高校の授業設計に携わっています。探究の授業において、先生方のサポートをするのが私の役割です。生徒たちにどんな力を身につけさせたいのか。
学校や先生方の要望に合わせて、どのようなコマ割りで、どのような資料を使って、どのような授業を作っていくか計画を立てていきます。
学校側の意向を汲み取るのはもちろんですが、私から提案することもあります。昨年度はこれが採用されて、SEL教育(感情教育)を実施しました。生徒自身の自己理解を深め、気持ちを言語化できるようにするプログラムです。
自分の気持ちをうまく表現できないから、些細なことですれ違ってしまう。そんなことが日常的にあると思うんです。意図せずそうなってしまうのは、お互いもどかしいですよね。
すぐに言葉にできるようになるのは難しいけれど、考えるクセをつけることで少しずつ解消していく。それがこの授業の狙いです。
── 探究支援を進めるなかで意識していることはありますか?
私が心掛けているのは、相手の情報を正しく受け取ることです。
学校に常駐しているわけではないので、生徒たちの様子や学校の状況を完全には把握できません。だからこそ、聞いた情報を鵜呑みにするのではなく、第三者として自分の目で判断することを大切にしています。
実際に訪問したときに、いかにして情報をキャッチするかですよね。生徒に対しても、先生方に対しても、そのスタンスは変わりません。
また、そうした関わりのなかで、いつも心に持っている願いがあります。自分の人生は自分で決めていいんだと、気づいてもらうことです。
そしてその土台にあるのが、自己肯定感だと思っています。挑戦したプロセスや存在そのものを無条件に認められた経験が、自分らしい人生を歩むきっかけになると信じています。
探究は人生。生徒たちの中にある好奇心を取り戻したい。

── 最後に、森さんにとって探究とは何ですか?
探究は特別なものではないと思っています。
小さい頃は、とりあえず触ってみたり口に入れてみたり、みんな当たり前にやっているんですよね。だから私にとっては、人生みたいなものなんです。
でもそれが、答えを与えられる教育に慣れてしまうことで、どんどんできなくなってしまいます。それなのに、社会から求められるのは、自ら考えて自発的に動ける人材です。これは教育現場と社会現場との大きなギャップだと捉えています。
だからこそ生徒たちには、思考のクセを身につけて欲しいと思っています。自分で問いを立てて、分からないことを調べて、そこから気づきや学びを得る。
「探究の授業」と聞くと難しく捉えてしまいますが、もっとシンプルに考えて、楽しんでいいのではないでしょうか。小さい頃は話すのも絵を描くのも全てが新鮮で楽しかったはずですからね(笑)
編集後記
森さんのお話を聞いて、探究支援という仕事の奥深さを知ることができました。今後やりたいことを伺ったところ、内定者から入社1年目の社員を対象とした、教育支援事業の展開も考えているそうです。若者のつまずきをサポートしながら、企業側の早期退職という課題にも向き合っていきたいと話してくれました。今後の事業展開が楽しみです。
森さんへのお仕事依頼やご相談は、インスタグラムのDMからお問い合わせください。https://www.instagram.com/maemae.mori
