【インタビュー】沖縄の高校生に、信頼できるつながりと挑戦の場所を届けたい。一般社団法人chakkaの目指す未来とは?
教壇には立たないけれど、教育の現場を支えている人たちがいます。
仕事への想い、飛び込んだきっかけ、大切にしていること。このシリーズでは、そんな一人ひとりの言葉を、記事にしてお届けします。
今回は、一般社団法人chakkaの代表理事、田辺由香里さんにお話を聞きました。
2025年8月に設立された、一般社団法人chakka(以下、チャッカ)。わくわくに火を灯し、新しい世界に触れることで、未来への可能性を広げてほしい。法人名には、そんな想いが込められています。
「沖縄の高校生に、信頼できるつながりと挑戦の場を。そして、未来を切り開くコミュニケーション力を。」そんな理念を掲げるチャッカは、2026年度中の本格始動に向け、沖縄県内のパートナー企業とともに準備を進めています。
高校生の「やってみたい」をかたちにする。居場所づくりから始まった、小さな挑戦。

── チャッカ設立前にも教育関係の仕事をしていたとお聞きしました。どのようなことをしていたのでしょうか?
2023年の2月から、沖縄県本部町の地域おこし協力隊として働き始めました。沖縄県立本部高校の広報として、学校の魅力を発信することが主な仕事です。
はじめは広報誌の記事を書いていたのですが、自己否定する高校生たちをたくさん目の当たりにして、何か自分にできることがないか模索していました。
そんな想いで立ち上げたのが、チャッカ設立のきっかけにもなった「夢実現武(ゆめじつげんぶ)」という同好会です。
最初に取り組んだのは、高校生が安心できる居場所を作ること。当時は保健室が生徒たちのたまり場になっていて、放課後に居場所がないという問題を抱えていました。
なんとか解消したいと思い校長先生に相談したところ、空き教室にカフェスペースを設置することになったんです。
部員をはじめ、地域の方々の協力のもと完成したこの場所は、夢実現武の活動拠点にもなっています。


その後も、地域資源を活かした商品開発やマルシェでの販売、ラジオやSNSを活用したメディア発信など、さまざまな活動をしてきました。
高校生の「やってみたい」を大切にしながら、安心して挑戦できる場所をつくるのが、当時の私の仕事です。
── 夢実現武の活動で、印象に残っていることはありますか?
特に印象的だったのは、マイプロジェクトアワードの沖縄県サミットです。これは、高校生が自分の気になることや身近な問題を解決するためにプロジェクトを立ち上げ、その結果を発表する舞台です。
しかし、数ヵ月前から出場は決まっていたものの、多くの部員がどこか他人事でした。巻き込まれてしまったから仕方なくやっている、という子もいたと思います。
挑戦する雰囲気もなく、直前になっても何も準備していない。そんな状況を見て、辞退することを提案しました。このまま続けても、この子たちのためにならないと思ったんです。
しかし、そこから部員の目の色が変わりました。リーダーシップを発揮する生徒が出てきて、それに触発されるように前向きな雰囲気に変わっていったんです。
そして迎えた当日、発表の直前まで何度も練習する姿は、より良いものに仕上げたいという気持ちに満ちているように見えました。
その結果、県内35チームの中から代表に選出されて「沖縄の未来のタネ賞」を受賞。あのとき流した涙は、本気で取り組んだ証だと思います。

夢実現武の1期生がこの春に卒業を迎えたのですが、そこで「田辺さんに出会えて良かった」という言葉をもらったとき、立ち上げてよかったと心から思いました。保護者の方々からもお礼の言葉をいただいて、さらに身が引き締まる思いです。
くすぶっていた2年半。先生のひとことが、私のわくわくに火を灯す。

── 地域おこし協力隊の着任当初から、起業を目指していたのでしょうか?
起業すること自体は興味があったので、地域おこし協力隊の1年目から起業塾に入っていました。しかし、具体的な事業のイメージがなかったので、行動できないまま時間だけが過ぎていきました。
教育事業での起業というと学習塾しか思い浮かばず、せっかくなら楽しいことをやりたいという性格なので、なかなか踏み切れなかったことも要因だと思います。
とはいえ、地域おこし協力隊の任期は3年しかありません。自分は何がやりたいんだろうと考えているうちに、気付けば残り1年を切っていました。
── そこから法人設立に至るまでに、どのようなことがあったのですか?
一般社団法人の設立に向けて動き出したきっかけは、学校の先生からのひとことでした。それが、2025年4月のことです。
夢実現武での活動を通じて、それまで内向的だった生徒たちの表情がみるみるうちに変わっていく。そんな様子を見ていた先生が、「応援するよ」と声をかけてくださったんです。
「素晴らしいことをしているのだから、絶対に続けるべきだ」という力強い後押しに、私もようやく覚悟が固まりました。
そこからは、背中を押してくださった先生や起業塾のメンターにも理事として参画いただき、強力なサポートのもと準備を進め、2025年8月にチャッカを設立しました。
実は、夢実現武の活動中は、どこかひとりで走り続けているような感覚がありました。気軽に相談できる相手もおらず、孤独を感じていたこともあります。
しかし現在は、信頼できる方々に加わっていただいたことで、大人同士で議論を交わし、状況を共有できる体制が整いました。そのつながりが私の大きな支えとなり、今では自信をもって活動できています。
挑戦のきっかけを沖縄から全国へ。未来を切り開く経験を届けていきたい。

── チャッカの今後の展望について教えてください。
迷いながらも一歩を踏み出す経験を、生徒たちと共有していきたいです。
プライベートや進路の悩みを抱えながらも、新しいことに挑戦する。そんなとき、何を優先し、どうやって動くのかを自分で決めることも、未来を切り開いていくのに必要な力です。
いきなり正解を見つけるのは難しいけれど、チャッカでの活動を通じて、自分で選んで動く経験を積み重ねて欲しいと思っています。
以前は、生徒の主体性を尊重するなら、大人は口出ししない方がいいのではと悩むこともありました。しかし、なかなか一歩を踏み出せない生徒が多いなか、大人が挑戦のきっかけを示すことも必要なのではないかと感じています。
主体性を守ることと、放置することは違います。だからこそ、迷っている背中をそっと押して、自分で決めて動く経験を支えていきたいです。
目の前の生徒や先生方と正面から向き合ってきた結果、今のチャッカがあります。これからも手探りでの挑戦を続けながら、一歩ずつ進んでいきたい。そして最終的には、この活動を全国に広げていきたいです。
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